日吉大社 430万円目標
19日まで 「存在広く知ってほしい」
天台宗祖・最澄が805年に中国から茶の種子を持ち帰り、まいたとされる日本最古の茶園「日吉茶園」(大津市)の再整備に向け、日吉大社(同)が費用をクラウドファンディング(CF)で募っている。関係者は「伝教大師伝来の約1200年の歴史を有する日吉茶園は全国の茶業・茶道関係者の聖地。存在を広く知ってほしい」と呼びかける。(東川直央)
日吉大社の伝承をまとめた「日吉社神道秘密記」(1582年)によると、805年、最澄が遣唐使として唐から帰国した際、茶の種子を持ち帰り、故郷である坂本にまいたとされる。日本茶が書物に初めて記述された「日本後紀」(840年)には、815年に大津を訪れた嵯峨天皇に煎茶を献じたことや、天皇が畿内と周辺の国に、茶を栽培して毎年献上させることにしたとも記される。
滋賀県は日本有数の茶の産地で、日本五大銘茶の朝宮茶(甲賀市)も最澄が持ち帰った茶の実をまいたことがゆかりとされる。
茶園は約100平方メートルで延暦寺領だったが、明治時代に寺社領を国のものとした
などの影響で坂本村(のちに大津市に編入)の所有に。1877年、同村から茶園が寄進され、同大社が管理している。
歴史ある茶園だが、一般にはあまり知られていない。茶樹資源を守る活動をしている「日本最古のお茶伝承プロジェクト」(大津市)の堀井美香代表(58)は、「日吉茶園の茶は、ごく一部の人しか触れることはできなかった」と話す。唐時代の釜で茶の粉を煮て、お茶を作る「煮茶」と呼ばれる入れ方もなじみがない。 一方で、鎌倉時代に宋から茶を持ち帰った臨済宗祖・栄西は、茶の粉を入れた容器に湯を注ぎ
でかき混ぜる「点茶法」を学び、喫茶を普及させた。これが現在の茶の湯につながっていく。
現在、日吉茶園の茶は、毎年5月の八十八夜の茶摘祭で神職や地元園児らに新芽が摘み取られ、比叡山延暦寺で最澄の命日(6月4日)に営まれる法要や、同大社で10月に煎茶道
の家元が参加した献茶祭、4月の山王祭で4基の
に乗せて供えられる。
京阪坂本比叡山口駅に隣接する同茶園は、県道比叡山線を拡幅する工事の影響で、3月上旬に門や玉垣を解体。新たに南側の隣接地を購入し、石垣の構築や門の設置などで再整備する。今月7日に着工され、4月中の完成を目指す。
CFでは、再築整備に必要な費用約1000万円のうち430万円を目標とする。同大社の担当者は「CFにすることで、全国に広く呼びかけて茶園の認知度を上げたい」と話す。返礼品として、支援者の芳名が入った玉垣を設置する。
CFは19日まで。問い合わせは同大社社務所(077・578・0009)。