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文化財 最新技術で鮮明に 

文化財 最新技術で鮮明に 

赤外線カメラ 文字など復元

 歴史的資料が多く残る長浜市で、精密化学メーカー大手・富士フイルムの関連会社が、市内の寺社や長浜城歴史博物館で保存されている肖像画や古文書などを復元・複製する活動を進めている。経年劣化で文字や図柄が見えなくなった文化財を最先端の技術で鮮明化するもので、今夏からは赤外線カメラを使った実験も始まった。同博物館は「歴史の解明を期待できる」としている。(清家俊生)

富士フイルム関連会社 長浜城博、寺社の所蔵品

文字が不鮮明な長浜城歴史博物館所蔵の木札=富士フイルムBI福井長浜営業所提供
文字が不鮮明な長浜城歴史博物館所蔵の木札=富士フイルムBI福井長浜営業所提供
赤外線カメラで文字が浮かび上がり、嘉永6年の作とわかった=富士フイルムBI福井長浜営業所提供
赤外線カメラで文字が浮かび上がり、嘉永6年の作とわかった=富士フイルムBI福井長浜営業所提供

 今年8月、同博物館の研修室。富士フイルムBI福井(福井市)の長浜営業所の職員が最新の赤外線カメラを使い、内容が目視できない同館所蔵の木札を撮影した。

 撮影は通常の明るさの部屋で約1時間半かけて行われた。社員がシャッターを押すと、カメラにつながれたパソコンのモニターに墨で書かれた木札の文字が鮮明に映し出された。

 木札は江戸時代、長浜で盛んだった浜
縮緬ちりめん
の組合が1853年(嘉永6年)に約束事を記した「縮緬仲間制札」とわかった。立ち会った同博物館の担当者からは驚きの声が上がった。

 同社は、2021年4月に長浜営業所を設置。複写技術を生かした社会貢献事業の一環として、1億5000万画素の高精細カメラなどを使って、古文書の複製に取り組んできた。これまでにも、石田三成の肖像画や賤ヶ岳の戦いの際に豊臣(羽柴)秀吉が弟・秀長に送った軍令書状などの複製を行ってきた。

 この夏からは、最先端の赤外線カメラを導入。同博物館のほかにも、大通寺(元浜町)で、1800年代初頭に描かれたとみられる山門の立面図を確認した。

 同社の取り組みに対する市内の歴史関係者の期待は大きい。同博物館の福井智英館長は「デジタル技術の進歩を感じる。肉眼で中身を確認できるようになり、調査研究の幅が広がった」と喜ぶ。同博物館は、今後も所蔵する各種資料での活用を検討しているという。

 同営業所の原田浩邦さん(64)は「長浜は文化財の多い地域。依頼があれば協力していきたい。復元や複製を通して地域活性化につながれば」と話している。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 文化財 最新技術で鮮明に