月宮殿山 4年かけ復元新調
湖国三大祭りの一つ「大津祭」で巡行する
の「
」に飾る幕が4年がかりで復元新調された。新しくなった幕は10月13日の本祭から使われる予定で、同祭保存会の古家弘巳会長(70)は「曳山を彩る幕の美しさを多くの方に見てもらえれば」と話している。(角川哲朗)
大津祭 図柄や色の表現 苦労
幕は絹製のつづれ織りで、
(縦163センチ、横186センチ)と胴懸幕(縦163センチ、横276センチ)2枚の3枚1組で構成。七福神が描かれており、江戸後期の作とされる。大津市文化財保護課によると、糸を染色する際に鉄を使っているため、さびて黒色の糸の傷みが特に激しく、一部が欠落するなど使用できる状態ではなかったため、復元新調することにした。
2020年から取りかかり、1年目は復元する際の色合いや図案について市や同保存会、月宮殿山の関係者らと協議。2年目から本格的に着手した。
作業は、正倉院(奈良市)の宝物復元などを手がけてきた「龍村美術織物」(京都市)が担当。同社によると、左胴懸幕の弁財天の琵琶の持ち方に違和感があり、詳しく調べたところ、幕が裏返しに使われ、琵琶が付け直されていることが新たに分かったという。
10日に市歴史博物館で幕が報道関係者に公開され、同社の谷口仁志・制作部長は「琵琶の位置の復元が難しかった。元の図柄や色をどう表現するか苦労したが、きれいに復元できてよかった」と語った。復元新調にかかった費用は約2900万円で、国が半額を補助し、残りを県、市、月宮殿山で負担した。
また月宮殿山の宵宮飾りに使われる金物で、1776年に制作されたとされる「
」も修理された。曳山責任者の栢口智司さん(60)は「子どもの頃から曳山に乗っており、年々傷んでいくのを目の当たりにしていたので、復元や修理の機会に立ち会えたのは感慨深い。未来に引き継いでいきたい」と気持ちを新たにしていた。