大津祭 西王母山・見送り幕など
湖国三大祭りの一つ「大津祭」(宵宮10月11日、本祭12日)で各町が巡行する
について、大津祭保存会は、2023年度から2年かけて修理や復元新調を行っていた「見送り幕」など3件を報道関係者に公開した。いずれも宵宮で一般に披露される予定で、担当者は「間近で見てもらい、大津祭の歴史の深さを感じてもらえれば」と期待している。(角川哲朗)
宵宮で披露「歴史感じて」
大津祭は天孫神社(大津市京町)の祭礼で約400年の歴史があり、曳山を飾る豪華な幕や精巧なからくり人形が見どころの一つ。2016年に国の重要無形民俗文化財に指定された後、同保存会が国などの補助を受けて、衣装や装飾品などの修理・復元に順次取り組んでいる。
3件は▽
(丸屋町)の見送り幕▽
(太間町)のからくり人形▽
(上京町)のからくり人形――で、18日に公開された。
西王母山の見送り幕「
」は江戸後期のものとみられ、中国清朝期の図柄を基に日本で作られたと考えられるつづれ織りの幕で、中央に竜が大きく描かれている。縦糸、横糸ともに劣化して損傷しているほか、色があせている部分も多いことから今回、約1500万円かけて復元新調した。
復元は、老舗織物メーカー「川島織物セルコン」(京都市)で祭礼幕などの製作や修復に約20年取り組んでいる明石文雄さん(78)が担った。明石さんによると、元の幕は2枚を真ん中でつないであるものの、約3センチずれていて左右の図柄が合っておらず、きれいな復元図案を作るために、元の図柄を模写するなど試行錯誤。図案を完成させるのに、半年ほどかかった。
元の幕では少し間延びして不自然だった竜の顔も整え、色もこれまでの経験などから鮮やかに復元した。明石さんは「復元図案を作るのに最も神経を使ったが、とても華やかでいい幕に仕上がった」と笑顔を見せた。
「登竜門」の故事に由来し、コイが滝を登るからくり人形を備えた「龍門滝山」では、からくりは1日で20回以上披露するため傷みが激しくなるといい、細かい動きなどの調査も兼ねて修復作業を行った。
レバーが曲がり、からくりを支える軸も傷んでいたため、本来のなめらかな動きができるように修復。また、コイを見る「
人形」は、これまで巡行中やからくり披露の時にも動かしたことがなかったが、右腕や顔を動かせることが判明した。そのため、元々は動かしていたであろうと推測し、動かせるような仕掛けとして復元した。
今年は実際に人形を動かす予定で、曳山責任者の松田征也さん(64)は「小さな頃から曳山に乗っているが、人形が動くとは知らなくて驚いた。これから動かし方などを相談していきたい」と喜ぶ。
このほか、月宮殿山のからくり人形が持つ「軍配房」も新調された。同保存会の古家弘巳会長(71)は「大津祭の歴史と伝統を未来に紡いでいく使命感とともに、新たな歴史も作っていくという思いで修理に取り組んでいる。たくさんの人に見てもらいたい」と話している。