死傷者への思い胸に 「安全に揚げたい」
2015年5月の落下事故以来途絶えていた東近江市の100畳敷大
の飛揚が今年5月に復活する。地元の東近江大凧保存会は昨年9月、飛揚の再開を目指そうと、新たな大凧を制作。保存会の山田敏一会長(71)は「亡くなった方、けがをした方への思いを胸に安全に凧を揚げたい」と話している。(中村総一郎)
■継承
事故は15年5月31日に発生。同保存会や市などでつくる実行委員会が同市のふれあい運動公園で開催した「東近江大凧まつり」で縦約13メートル、横約12メートル、重さ約700キロの大凧が落下し、観客1人が死亡、8人が重軽傷を負った。
保存会は事故をきっかけに、100畳敷きの大凧の制作と飛揚を見合わせた。一方で、その間メンバーの減少や高齢化が進むなど大凧の制作や飛揚技術の継承が危ぶまれるようになったといい、保存会は昨年4月、定期総会で小椋正清市長に危機感を訴えた。市はそれを受け、新たな大凧の制作費100万円を補助した。
完成した大凧の図柄は「昭和100年」がテーマ。大凧を揚げる日は「昭和の日」(4月29日)に近い5月2日となり、「近江八日市の大凧揚げ習俗」(国選択無形民俗文化財)の保存、継承を目的に実施し、バザーや凧のコンテストなどは行わないという。
■対策
大凧は、障害物の影響を受けない広い場所で揚げる必要があるため、11年前と同じ場所で揚げられる。ただし、凧の引き綱の長さにあたる半径約200メートル内を立ち入り禁止とし、その外側に観覧場所を設ける。当日は気象条件を詳細に確認し、平均風速10メートル以上の場合は中止とし、順延などはしないという。
当時の事故調査検討委員会の報告書では、凧の張力を抑えるために引き綱に取り付けるアンカー(重し)として使った約2トンの車両が約10メートル移動するほどの力がかかったと結論づけた。今回は注水して総重量約20トンになる散水車を使用し、大凧に取り付ける引き綱は、これまでより10ミリ太い30ミリで対応する。
運営体制は、従来の実行委員会の主催から、保存会に変更し、市が後援・協力する。市は新年度当初予算案に保存会への補助金500万円を計上し、警備や会場設営、凧の運搬、観客を会場へ運ぶシャトルバスの費用などに充てられるという。
安全対策は主に市が担うといい、大凧が完成した昨年9月以降、保存会と協議を続けてきた。事故調査検討委員会が提言した「安全管理マニュアル」も作成中で、小椋市長は「二度と事故を起こしてはならない」と強調している。

