東近江ゆかり 中路融人企画展
25日まで 17点の「表現」に迫る
湖国の風景を描き続けた東近江市ゆかりの日本画家、
(1933~2017年)の絵を気象学の視点で鑑賞する企画展「中路融人×気象学―心象風景―」が同市五個荘竜田町の中路融人記念館で開かれている。作品に見られる気象現象をひもとき、1枚の絵に込められた中路の「表現」に迫る。25日まで。(中村総一郎)
中路は京都市出身。母の故郷だった旧旭村木流(現在の東近江市五個荘木流町)をたびたび訪れ、県内各地を描いた。「自然と一体化して写生をしていた」と言われ、一回の取材で何時間にもわたって風景を観察、写生したという。
東近江市は、市内にある博物館の連携を進めていて、同市ゆかりの探検家・西堀栄三郎(1903~89年)を顕彰する「西堀栄三郎記念 探検の殿堂」の学芸員らが企画。山下晃・大阪教育大名誉教授(気象学)が協力した。
「余呉の月」(2004年)は、満月に照らされた余呉湖(長浜市)を描いた作品。説明文では、月を囲む環状の明るい部分は「
(コロナ)」、さらに外側に描かれている大きな光の輪は「
(ハロ)」であることを紹介。いずれも空中に浮遊する氷晶や微水滴などの影響を受けた光学現象としている。
さらに湖面に映り込んだ遠景の山々の影にも着目。描かれた月は高い位置にあるため、実際には湖面に山影は映らないことや、山の影を見るには、高い場所から見下ろさなければならないが、手前のヨシは見上げるように描かれている、などと解説している。
こうした一連の描写が1枚の絵に収まっていることに、探検の殿堂の田中一実学芸員は「科学の視点では説明が難しい構図」とした上で「写実性を大切にしながらも、時にはそこにあるものを描かなかったり、描き足したり、時間軸が凝縮されて、高低差の異なる地点から見た風景が一体化している」と持論を述べた。
ほかに、
が立ちこめる風景を描いた「兆映」、積もった雪が木の根元だけ消える根開きの現象が見られる「雪野」、空の色の変化がそれぞれ異なる「黄昏」「湖映」など計17点が展示されている。田中学芸員は「中路が気象現象を意識して描こうとしていたかどうかは分からないが、中路の感性と技術によって表現された心象風景と言えるのではないか。鑑賞のひとつの視点として楽しんでほしい」と話す。
午前9時半~午後5時。月曜休館。入場料は高校生以上300円、小中学生150円。問い合わせは中路融人記念館(0748・48・7101)。