安土城考古博 「弥生犬」模型
近江八幡市の県立安土城考古博物館に「看板イヌ」が誕生した。メスの「弥生犬」の精巧な模型で、展示室の改修をきっかけに、30年以上過ごした展示室を飛び出した。館内外を“散歩”する様子がSNSで発信され、じわじわ人気を集めている。(林華代)
展示室改修で移動 散歩や出迎え SNS発信
弥生犬は1992年の開館当初から、弥生時代の農耕生活を紹介する第1常設展示室で、農具を抱えたり土器を作ったりする人間の模型と展示されていた。
高精細なコンピューターグラフィックス(CG)で再現した安土城の映像を上映するシアターを展示室に新設することになり、改修工事のため、定位置から引っ越すことになった。
同館は昨年6月、棚に固定された弥生犬を動かすのに苦労する様子を「手こずるワンコ」などと公式インスタグラムで紹介。それ以来、トレードマークの
を首に下げ、看板イヌとして活動し始めた。
エントランスや事務所の窓口で来館者を出迎えたり、岐阜県の博物館まで「おでかけ」したり。新しいシアターにもオープン前にいち早く潜入した。
前脚を広げ、人なつこくこちらを見上げる様子は本物と見まがう愛らしさ。SNSの投稿を続けるうちに「会いに来ました」「今日はどこにいますか?」と、弥生犬目当ての来館者も増えたという。
同館の藤崎高志学芸員は「弥生犬は開館以来、博物館を見守ってきてくれた。博物館に関心を持ってもらうきっかけになれば」としている。
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弥生犬は人とつながりが深い動物として展示されていたが、安土城考古博物館には資料がなく、詳しいことは分からないという。どんな犬だったのか。
1980年、亀井遺跡(大阪府八尾市など)で弥生犬のオス、メスの1匹ずつ、ほぼ完全な骨格が出土。当時、発掘調査にあたった大阪府立弥生文化博物館(和泉市)の職員らが、96年に日本で初めて模型で復元した。動物考古学や解剖学の知見に基づき、出土したオスの骨や、特徴が近い四国犬も参考に作られた。
同館の竪穴住居のコーナーで弥生人の家族と展示されており、ホームページでは漫画で「狩りのおともをしてたんだよ」「お墓をつくってもらったよ」などと紹介。古くから人間のパートナーだったことがうかがえる一方、各地で切断跡がある弥生犬の骨も出土しており、食用にもされていたと考えられている。
香川県で発見されたと伝わる弥生時代の銅鐸(東京国立博物館所蔵)には、イノシシを狩る人とイヌが表現されている。