
昭和の駄菓子屋を思わせるアイスキャンディー店が彦根市河瀬の街角にある。「滋賀の食材とお米で作る」がテーマで、県内でとれる季節の青果、米からひとつずつ手作りしている。病気の祖母に食べさせたい――。店主の熊倉侑子さん(31)のこだわりには大切な人への思いがある。(小手川湖子)
「NAMU NAMU STORE」で、2024年に開店した。定番の「伊吹ミルク」や、愛荘町の継ノ農園のトウモロコシを使った「継ノ農園とうもろこしアイス」、彦根市産のジャガイモを使った「じゃがじゃが」など季節に応じラインアップは変わる。
1個税込み380円から。店内には、アイスキャンディーのほか、オリジナルグッズや駄菓子がずらりと並ぶ。古い冷蔵庫やたばこスタンドなど、レトロな機器が「昭和レトロ」を醸し出している。
熊倉さんは地元出身。菓子教室で教えていた母の影響もあって、21年から実店舗を目標に、キッチンカーで県内を巡り始めた。当初はサンドイッチを販売していた。
アイスキャンディーを手がけることにしたのは、同居していた祖母の山路みよ子さんの存在があった。長年闘病し、食事制限で、好きなものを自由に食べることができなかった大好きなおばあちゃん。それでも、「これなら食べられる」と好んで食べていたのが市販のアイスキャンディーだった。「好きな野菜や果物をアイスキャンディーにしたらおいしく健康に食べられるのでは」と店を開くことを決意した。
原料の野菜や果物のほとんどを知り合った県内の農家から仕入れた。「アイスキャンディーになるの?」と最初は驚かれた。アイスに固める前の液体に粘り気を与える増粘剤や安定剤は自然の素材で代用しようと、レンコンやデンプンなどで試作を重ねた。最終的には、農家「SHIBATA GROUND MUSIC」(長浜市)の「ありがとう米」を使うことに決めた。米の量を少し変えるだけで、本来出したい素材の味を超えて米の風味が強く出てしまい、配合の検討に試行錯誤するなど、レシピ開発や素材選定に2年を費やした。
思い入れのある農家の食材から生まれる、「おいしいでしょ?」と言いたくなる程の自慢のアイス。みよ子さんは完成前に亡くなり、食べてもらうことはかなわなかったが、店舗は「一緒に住んでいた家をなくしたくない」とみよ子さんの家を使わせてもらうことにした。「おばあちゃんには食べてもらえなかったけど、いつも見守って背中を押してくれているように感じる」と店内を見渡しながら、思いをはせる。
店頭での販売やネット販売の他、全国で約50の温泉施設や銭湯などにも卸している。今後も全国に広げていきたいといい、熊倉さんは「『あんな店あったな』といつか懐かしんでもらえるような場所にしたい」と意気込む。
午後1~5時。インスタグラムで定休日を知らせる。
出典:読売新聞オンライン
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