「まねっこ」で心穏やか
子どもたちが遊びを通して、怒りなど負の感情に対処するすべを身に付けてもらおうと、滋賀大教育学部の芦谷道子教授(臨床心理学)が絵本「こどもマインドフルネス こころ しずまる まほうの まねっこ」(Gakken、税込み1496円)を出版した。仏教の
からくる集中法「マインドフルネス」がもとで、芦谷教授は「負の感情にすぐ反応するのではなく、観察し、負の感情からお別れする方法を教えてあげてほしい」と話す。(林華代)
滋賀大・芦谷教授 子どもの自己肯定感向上
マインドフルネスは、仏教をはじめとする東洋思想をもとにし、宗教色を取り除いた注意集中を高めるトレーニング法。米国でプログラムが開発され、世界的に広まった。英の一部地域の学校では、マインドフルネスの研修を受けないと教員になれなかったり、海外の大企業の研修などで使われていたりしており、芦谷教授は日本で研究、普及に努めている。
「あつあつスープを、ふうふう さますと、だんだん きもちが おちつくよ。ほっこり とっても やさしいきもち……」
「ねこちゃん」があつあつのスープを冷ますために、たっぷり息を吐くことに集中すると、落ち着く様子を紹介。子どもたちが「ないたり、おこったりしたとき」の簡単にまねができる対処法だ。
絵本はフルカラーの32ページで対象は2~9歳。「くまちゃん」「ねこちゃん」「わんちゃん」が登場し、3匹の行動をまねすると、「怒り・かんしゃく」「はしゃぎすぎ・落ち着かない」といった気持ちと向き合える。
「はしゃぎすぎるとき」では、「わんちゃん」が「きのまねっこ」をし、深呼吸をすすめる。目を閉じ、木になりきることで気持ちが静まるという。
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芦谷教授は専門的知識と技術を生かそうと、2019年、大津市のJR膳所駅前に滋賀大発ベンチャー第1号となる「イヴケア」の設立に携わった。毛髪中のストレス反応などを測定し、見えない「心の疲れ」を可視化し、結果をもとに心のケアにあたり、企業や金融機関の従業員などの心の健康の増進に協力している。
4月には「こころのケアルームPOINTぽわん」(ぽわんぽわん)を開設。子どものケアができるプレイセラピールームが備えられ、発達障害や不登校の子どもたちなどのケアにもあたっている。
芦谷教授は「ネガティブな感情を否定されたり、抑えつけられたりすると、
につながったり、余計に怖い感情にとらわれたりする可能性がある。負の感情をあるがままに受け止め、うまく一緒にやっていけると、心の健康や成長につながることもある。自己肯定感の向上につなげてあげてほしい」と言い、「多忙でストレスを抱えがちな先生方も自分に慈しみを向けるマインドフルネスのあり方を参考にしてもらえば、笑顔で子どもたちに向き合えるのでは」と話している。
絵本は全国の書店、ネット書店で販売中。