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水のいらない糸染色術 

水のいらない糸染色術 

県東北部工技センターなど 世界初実用化

水を使わない染色の実用化に成功した県東北部工業技術センター(長浜市で)
水を使わない染色の実用化に成功した県東北部工業技術センター(長浜市で)

 県東北部工業技術センターなどが、水を使わずに糸を染色する技術の実用化に成功した。染色時の二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減や廃液をゼロにできるなど環境負荷の軽減につながることが期待され、同センターの担当者は「普及に向け、技術のさらなる向上とPRに努めていきたい」としている。(角川哲朗)

CO2減、廃液ゼロ

 糸など繊維素材を染色する場合、繊維を染料を溶かした水に漬けて浸透させる方法が一般的。ただ、大量の水が必要で廃液処理にも多額の費用がかかる上、染色後に乾燥させる作業に多くの電力を使うため、近年では環境への負荷が課題となっていた。

 今回の技術では、水の代わりにCO2を使う。圧力容器の内部にCO2を高温・高圧にして気体でも液体でもない「超臨界流体」の状態にして充満させ、そこに溶解した染料を投入し、超臨界流体を繊維に通過させることで糸を染める。その後、圧力を弱めると、水を使っていないので乾いた状態で生地が取り出せるため、乾燥工程も省略できる。

 超臨界流体は、コーヒー豆からカフェインを抜いたり、卵黄からコレステロールを除去したりする際にも応用されている手法。超臨界流体を用いた染色は、環境意識の高まりを受けて、世界各国のアパレルメーカーなどが15年ほど前から東南アジアの工場を中心に研究や利用を始め、主にニット製品に使われている。ただ、できあがったセーターなどではなく、糸そのものから染色しようとすると、繊維の目が細かくて超臨界流体が通過する隙間が少ないため、均一に染めるのが難しく、色ムラが生じてしまうという。

 同センターでは繊維などの試験研究を行っており、福井大の協力のもと、縫い糸や刺しゅう糸の製造・販売などを行う「フジックス」(京都市北区)の滋賀事業所と連携して、糸の状態で超臨界流体染色をする研究を推進。2022年度に経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)に採択され、約2年半かけて超臨界流体に適した染料の種類や、温度と圧力の高さを見いだした。すでにトップアスリートが着用する陸上競技用のユニホームに使われており、糸の状態での染色の実用化は世界で初めてという。

 同センターによると、超臨界流体による染色が主流になれば、CO2排出量が現在よりも半減できるという試算もあり、糸の状態での染色だと用途も広がるため、商社やメーカーからの問い合わせもあるという。

 今後は、ポリプロピレンやナイロンなど応用できる糸を増やせるように研究を進めるといい、同センターは「環境意識の高まりを受け、近い将来に世界標準の染色方法になる可能性もある。いろいろな糸に応用できるよう研究を進めていきたい」としている。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 水のいらない糸染色術 

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