東近江の協議会 25日、展示や刷り体験
開発者宛て エジソンの礼状も
東近江市の蒲生地区まちづくり協議会が25日、大阪・関西万博で昔懐かしい簡易印刷機「謄写版」(通称・ガリ版)を紹介する。市ゆかりの堀井新治郎(1856~1932年)父子が、132年前の米シカゴ万博で発明王トーマス・エジソンの印刷機に出会い、それをヒントに発明したとされるガリ版。同協議会は展示と体験を通じて「万博をきっかけに生まれたガリ版文化を世界へ発信したい」としている。(中村総一郎)
ガリ版は、「滋賀魅力体験ウィーク」(24~29日)期間中の25日午前10時~午後7時、関西パビリオン多目的エリアに出展される。ガリ版の歴史や作業工程などを紹介するパネルのほか、エジソンの75歳の誕生日を祝う堀井の手紙に対し、エジソンから送られた礼状(複製)も飾る。
堀井と息子の耕造(1875~1962年)は、エジソンが発明し、1893年のシカゴ万博に出品されていた「ミメオグラフ」と呼ばれる印刷機をもとに、その翌年、簡易印刷機を考案。「謄写版」と名付けた。当時は毛筆が主流で、電気を使わずに大量印刷できる器具として普及していった。
ヤスリ板の上に置いた表面にロウが塗られた原紙に、鉄のペン(鉄筆)で文字や図柄を書く。ロウの部分が削り取られて原紙は無数の小さな穴が開いた状態となり、上からローラーを使ってインクを擦り込むと、微細な穴からインクが押し出され、用紙に印刷できる仕組み。鉄筆で書く際に「ガリッ、ガリッ」と音がすることから「ガリ版」という愛称になったとされる。
ガリ版は、学校などではコピー機が普及するまで、わら半紙のテストやプリントなどの印刷に用いられた。同協議会によると、テレビアニメ「サザエさん」の台本の印刷にも2009年まで使われていたという。
同協議会のメンバーで、地域でガリ版体験を行う「ガリ版芸術村」代表の岡田文伸さん(69)は「事務機器としての役割は終えたが、新たなアートの技法として広がりつつある」と話す。万博では、ガリ版を使った作品で知られるアーティストの水口菜津子さん(京都市)がデザインした万博にちなんだ図柄を、多色刷りで来場者に体験してもらうという。
東近江市では、明治40年代に建てられた同市蒲生岡本町の堀井本家が修復され、1998年にガリ版伝承館として開館。同協議会は地元小中学校で出前講座を開催するなどガリ版を伝える活動を続けている。西村純次会長(69)は「若い世代では知らない人も少なくない。地元の人にも、世界にも、東近江ゆかりのガリ版文化を万博で伝えたい」と意気込んでいる。