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映画「国宝」 大津にも光

映画「国宝」 大津にも光

歌舞伎舞踊「関の扉」や「藤娘」 ゆかりの芸能 劇中に

びわ湖大津館で行われた歌舞伎劇場のロケ(大津市で)=滋賀ロケーションオフィス提供
びわ湖大津館で行われた歌舞伎劇場のロケ(大津市で)=滋賀ロケーションオフィス提供
江戸初期のスタイルの藤娘を描いた大津絵=五代目高橋松山さん作(大津市で)
江戸初期のスタイルの藤娘を描いた大津絵=五代目高橋松山さん作(大津市で)
セットで使われたじゅうたんの上でパネル展をPRする若代副館長(大津市で)
セットで使われたじゅうたんの上でパネル展をPRする若代副館長(大津市で)

 芸に全てをささげた歌舞伎役者の人生を描き、大ヒット中の映画「国宝」。大津市の逢坂の関が舞台の演目「
積恋雪関扉つもるこいゆきのせきのと
」(通称・関の扉)、大津絵から生まれた舞踊「藤娘」が劇中で登場するほか、同市の「びわ湖大津館」などでロケも行われており、県内の芸能やロケ地の関係者は国宝ブームによる知名度アップに期待を寄せている。(林華代)

ロケ地マップ好評 「びわ湖大津館」劇場へ変身

 国宝は
任侠にんきょう
の家に生まれた主人公の喜久雄(吉沢亮さん)が、世襲制の色が強い伝統芸能の世界の中で、様々な苦難を乗り越えて女形へと成長する物語で、李相日監督が、芥川賞作家の吉田修一さんによる同名小説を「悪人」(2010年)などに続いて映画化。上方歌舞伎を代表する四代目中村鴈治郎さんが出演、歌舞伎指導している。

 「関の扉」は、王朝の政争と恋が絡んだ幻想的な情景を謡った浄瑠璃の一つ「常磐津」に合わせた歌舞伎の舞踊劇。逢坂の関を舞台に関を守る男と、帝を弔う忠臣とその恋人の3人が踊りを繰り広げ、桜の精も姿を見せる。

 喜久雄と、名家の御曹司俊介(横浜流星さん)が踊るのは、「藤娘」を2人の女形が競演する形にした「二人藤娘」。藤娘は当初、三井寺門前で土産として売られていた民画「大津絵」から五つの人物が早替わりする設定だったが、舞踊を得意とした六代目尾上菊五郎が、1937年に「藤の精」が娘になって踊るという演出に変え、現在はそれが独立した舞踊として上演されている。

 江戸時代、宿場町だった大津は落語や常磐津の舞台となり、その名が広まった。大津芸能倶楽部プロジェクト(寺田悠太代表)は、現代にも魅力を伝えようと、常磐津「関の扉」などを市内や東京都で上演している。今回、映画で取り上げられたのを受け、X(旧ツイッター)のアカウント「コトコト古典」(@cotocotocoten)で、2024年末に上演した「関の扉」の演奏とセリフの一部を浮世絵を交えた映像で公開している。寺田代表は「関の扉の作品の重要性を再認識した。大津ゆかりの芸能の魅力を映画を通して知ってもらえれば」と話す。

 びわ湖大津館では、歌舞伎劇場ロビーでの稽古シーンや外観の撮影が行われた。同館は1934年に外国人観光客誘致を目的に建てられた県内初の国際観光ホテル(旧琵琶湖ホテル)で、東京の歌舞伎座と同じ設計事務所が手がけた。撮影で使われた桜模様の赤じゅうたんの一部が残されており、その上で撮影風景を紹介するパネル展が8月末まで行われている。

 若代光弘副館長は「当館を徹底的に歌舞伎劇場にしていく映画関係者の人々の技術と思いに驚いた」と撮影を振り返り、「最近は1日に10~20人はロケ地巡りなどで訪れている印象。歴史ある建物の魅力が伝われば」と望む。

 県などでつくる「滋賀ロケーションオフィス」は、もう一つのロケ地である県立総合病院(守山市)も含めた滋賀ロケ地マップ約2万5000部を作成。県内の道の駅や観光協会などで無料配布していて、人気を集めている。

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[紹介元] YOMIURI ONLINE 映画「国宝」 大津にも光