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地域と絆深い存在に レイラック連載㊤

地域と絆深い存在に レイラック連載㊤

 

 サッカー・日本フットボールリーグ(JFL)のレイラック滋賀FCが、J3クラブとの入れ替え戦を制して、2026年からのJリーグ入りを決めた。滋賀初のJクラブまでの道のりをたどり、クラブが地域に発する効果を探った。

地域と絆深い存在に レイラック連載㊤
専用グラウンドで練習に励む選手たち(草津市で)

選手獲得交渉社長自ら
 

 琵琶湖対岸に比叡山を望む草津市の専用練習場に、レイラック滋賀FCの内林広高社長(42)は毎日のように顔を出す。「冗談しか言ってないんですけどね」。フランクな物言いは、選手との距離の近さを表している。

 県立草津東高からガンバ大阪に入った。ヴァンフォーレ甲府など経て、06年にレイラックの前身「FC Mi―OびわこKusatsu」に移籍すると、そのままフロント入りしてクラブ経営に携わり、昨年7月に社長となった。

 レイラックは05年、ジュニアユースクラブとして誕生。翌年、佐川急便京都サッカー部を引き継ぐ形でトップチームの活動を始めた。08年にJFLに参入、13年にJリーグ入りを目指すことを正式表明したが、壁を突破できずにいた。

 本気度が足りなかった。23年に「麗ビューティー皮フ科クリニック」が経営に参画してから潮の目が変わった。心機一転、チーム名を「レイラック滋賀FC」とし、「3年以内のJ参入を目指す」(河原吉貴・前社長)と、Jリーグ経験者を積極補強して戦力強化を図った。1年目に当時の過去最高順位となる3位に入り、JFL内で一目置かれるようになった。

 今季の運営費は昨季より3000万円増の約3億3000万円。内林社長は「増えたのはスタッフの人件費。チームを強くするためにトレーナーやコーチを増員した」と語る。レイラック以前の頃と比べると約2億円増えており、23年度のJ3全体の運営規模に当てはめるとほぼ中位にあたり、成績にも如実に表れた。

 ただ、専門の強化スタッフを迎えるまでには至らず、選手の獲得交渉も社長自ら行ってきた。それが、選手との関係性の近さにつながり、チームの明るい雰囲気を生み出してもいる。

 クラブの生き字引である内林社長は「甲府のような存在にしたい」と目標を語る。今でも甲府の街では、行きつけだった店から現役時代同様に歓迎を受けるという。

 22年、甲府がJ2ながら天皇杯を制すると、初優勝に号泣しながら大きな旗を振る高齢男性が全国中継に映し出された。「クラブ、選手が街の人に愛されていた」。まさに、レイラックで目指すものが凝縮されたシーンだった。

 いかに地域に根ざし、愛されるか。滋賀初のJクラブが、いよいよ一歩を踏み出す。

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