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脱「空白県」熱狂の予感 レイラック連載㊦

脱「空白県」熱狂の予感 レイラック連載㊦

 7日にあった入れ替え戦の第1戦、本拠地の平和堂HATOスタジアム(彦根市)には、レイラック滋賀FC史上最多となる9006人の観客が詰めかけた。上段席まで開放されたスタンドに、角田誠監督(42)は「これがJリーグだという雰囲気をつくってもらった」と感謝。選手も3得点を挙げ、アスルクラロ沼津との打ち合いを3―2で制した。

脱「空白県」熱狂の予感 レイラック連載㊦
入れ替え戦の第1戦で9006人が詰めかけ、上段席まで開放された平和堂HATOスタジアム(いずれも彦根市で)

 だが、このスタジアムはJリーグが求める要件を満たしていない。ナイター照明は照度1500ルクスが必要なのに、1000ルクスしかない。県スポーツ課は「国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会の主会場として開催競技に必要な照度を検討して決めた」と話す。

 2023年、Jリーグへの入会申請を行ったクラブは基準をクリアするため、クラウドファンディングを利用して資金を集め、照明器を載せたトラックを4台配置したテストを実施。仮設ながら要件を満たした。

 J3加盟後は、ナイター開催時だけでなく、デーゲームでも雷雨による中断などで試合が長引き、照明が必要になるケースも想定して備えなければならない。試算では、仮設照明費だけで年間約1億円の経費がかかる。2年前に完成した県の施設をすぐに改修するには多くのハードルがあり、「様々な意見がある。丁寧な議論が必要」と同課は慎重だ。

 それでも、我が街にJクラブがある意義は大きい。彦根市は23年9月、「Jリーグ誘致推進室」を設けて機運の醸成を図ってきた。リーグ最終戦前にはプリンターで手作りした横断幕をつくり、彦根駅に掲げた。

彦根駅に掲げられた手作りの横断幕
彦根駅に掲げられた手作りの横断幕

 「駅からスタジアムまでの行き帰りに、アウェーチームのユニホームを着たサポーターが来店するようになったと聞いている」と推進室の安部大輔主幹。街の活性化だけではない。子どもたちのサッカークラブの面倒を見ているという久保慶郎主幹は、「これまではプロの試合を見せるために京都や名古屋に行かなくてはならなかった。それが彦根で見られるようになる」と期待する。

 一度もJリーグ入りしていないのは滋賀、福井、三重、和歌山、島根の5県だったが、レイラックが悲願を果たし、「空白県」から抜け出した。浦和レッズといった熱狂的なサポーターが多いクラブとの対戦が天皇杯などであれば、レイラックサポーターも一層熱を帯びていくに違いない。

 2026年、サッカーの渦が琵琶湖に巻き起こる。

(この連載は、河村真司が担当しました)

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