近江鉄道(彦根市)の鉄道事業が上下分離方式の導入以降、順調だ。30年間赤字が続いていたが、初年度に脱却。沿線住民との交流も活発に行うなどして2025年度も輸送人員がコロナ禍前を上回る見込みで、2年連続の黒字となりそうだ。(矢野彰)
住民と交流誘客に一役

同方式では、県と沿線10市町でつくる「近江鉄道線管理機構」が鉄道設備を保有して保守管理を行い、同社は運行に専念する。県と10市町は導入した24年度からの10年間に、保守管理などで総額116億円を負担する。
同社によると、25年度の輸送人員は通勤・通学の定期利用がコロナ禍前を上回り、観光客など定期外もコロナ禍前の水準に回復。黒字を確保できる見通しとなった。主要駅間で定期利用者が増えていることが要因という。
24年度は沿線企業の従業員の利用増や専門職大学の新設などもあり、輸送人員は482万人で、コロナ禍により落ち込んだ20年度(369万人)から順調に回復。鉄道事業の営業損益は5200万円で、31年ぶりに黒字だった。ただ、保守管理費の高騰などに備えて大部分は機構に支払い、最終的に60万円の黒字となった。
赤字解消の背景には、同社が上下分離の実施までに、沿線の住民や自治体、企業との関係作りを進めたこともある。若手社員を中心に、住民とにぎわい創出や地域課題の解決のアイデアを出し合うプロジェクト「近江鉄道みらいファクトリー」を設け、意見交換会や会員組織の設立などを行ってきた。
また、全線無料で乗車できる「全線無料デイ」や、沿線10市町の高齢者が100円で乗車できる「シルバーパス」の販売も実施。全線100円で乗り放題にし、沿線で様々なイベントを展開する「ガチャフェス」では昨年、約2万4000人を集めた。長年、赤字で踏み出す余裕がなかった誘客への取り組みに次々挑戦してきた。
企業との意見交換も始め、通勤時間に合わせて最寄り駅に快速を停車させるようダイヤを見直したケースも。高校と連携し、進学を控えた生徒に学校説明会で定期利用を呼びかけている。
今年3月には交通系ICカード「ICOCA(イコカ)」を全33駅に導入する。無人駅化など合理化を進めたため、乗客の動向をつかめないのが課題だったが、導入後はデータを生かしたダイヤ作りも可能になる。同社はインバウンド(外国人観光客)も含めた誘客につなげたい考えだ。
